はらり、ひとひら。



「もー、玄関で何してんのさ。おれおなか空いたよ」


暫くすると、しびれを切らした海斗がおなかに手を当てやって来た。


「なにそれ・・・猫?」

じりじりと訝しげに師匠を眺めた海斗だが、次第にそれが猫でない生き物だと気づくと顔を青くし、後ずさる。


「可愛いでしょう。海斗も抱っこする?」

「─嫌だ!」


差し出された師匠と目が合うと、怯えた顔で彼はその場から消えてしまった。


「え…ちょ、海斗!」


あまりの豹変ぶりにこっちも驚く。そんなに怖いかな…


「あらあら、海斗ったら。ごめんなさいね狐さん。気を悪くしないで?おなかすいたでしょう」


待っててね、今準備するから。と言い残してお母さんはリビングへと姿を消した。