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暫くしてお母さんも帰ってきた。
「はー、ただいま」
「お、おかえりっ」
腕に抱いた師匠をお母さんに見せる。予想通りきょとんとした顔の母。
「な、何それ?猫?」
「ううん、狐。…拾ってきちゃった」
「狐!?」
驚くのも無理はない。
「こんな綺麗な狐さん。罰当たったりしないかしら…」
そう言いながらもお母さんは師匠のモフモフ具合にすぐに笑顔になって、師匠を抱いた。
「可愛いわね~、森に居たの?」
『妖怪なの?』と野暮なことはお母さんは聞かない。それは、お母さんなりの優しさだ。北の国でもない、こんな場所に綺麗な毛色の狐がいるはずないのに。
