運悪く冷たい雨が降ってきて、たき火は無意味なものと化してしまったため、人気のない使われていない空き家に入った。
囲炉裏はまだ生きているようで、即席の薪を入れてやればすぐに火がついた。
「あああ、あったまる~」
「本当にな」
「…まだ怒ってる?ごめん」
「いや。呆れてる」
そっか、ごめんね。珍しくしおらしい声に視線をやると、ざくろの頬はほのかに火照っているようだった。
普通に考えれば火にあたっているから当然だが、濡れた細い髪と相まって邪な思いがさした。
…何を馬鹿なこと。
さあさあと忙しなく打ち付ける雨音が、心音に聞こえなくもなかった。
「着物が乾いたらすぐにでも帰った方がいい。心配するだろう」
思えば私は、ざくろのことを何も知らなかった。彼女が森へ訪れてからもう何度も会っては他愛もない話をしたけれど、ざくろは自身のことをいっさい話していない。そう、それこそ名前以外。
