悲しすぎる事実に目頭が熱くなって、嗚咽を殺すために口元を覆う。必死に俯いていると気づいた茜さんが困ったように眉を下げた。 そして、たいそう寂しそうに笑ったのだ。 「ごめんなさいね。私、事故で記憶を…若い頃の記憶を殆どなくしてしまっているのよ」 「あぁでも─なぜかしら」 ─ふわり。紅い葉が舞う。 「とても懐かしい匂いがするわ」 「…!」