アカバの声は、まだ届かない。 彼女がアカバを思い出さなければ姿も見えないだろうし、声も聞こえない。 「茜さん。アカバという人を覚えていますか」 「あかば…?」 苦しい表情だ。思い出そうと必死に茜さんは落ち着きなく視線をさまよわせていた。 こんなに綺麗な、幻想的な季節なら、ひとつくらい奇跡が起こったっていいじゃないか。 「─っ」 目の前に、立っているのに。触れてもおかしくない距離なのに、茜さんの目に彼は映れない。