茜さんは、ゆっくりと優しく話してくれた。
昔茶屋を営んでいたことを知り合いから聞いたのは随分前だったけれど、山奥にある店なので立地が悪くなかなか行く機会がなかった。
事故の後遺症で足を少し痛めてしまい、家に帰ることもできず駅前に新しい家を構えた。
長いリハビリを耐えてようやく最近になって茶屋へ行けるほどに脚力は回復した。
嬉しそうに茜さんが笑うので私も嬉しくなって、つられて笑う。
「ここが茜さんが営んでいた茶屋…」
古い建物だけれどとても趣を感じる。
茅葺(かやぶき)屋根の小さな小屋。椅子を出したいと茜さんが言うので喜んで一緒に組み立てた。
あっという間に─昔の風景であろうものが完成した。
「…ああ、懐かしいな」
アカバのひっそりとした囁きに目頭が熱くなる。
「ありがとうね、今お茶淹れてくるから…」
「3つお願いします」
「え?」
きょとん、と目を丸くした茜さんに微笑んで繰り返す。
「お願いします」
