はらり、ひとひら。



天涯孤独。他にきょうだいのいない私は本当に一人になってしまった。まだ幼い私に、周りの大人たちは憐れみの眼差しを突き刺した。


『可哀想に…まだ小さいのにねぇ』


『一体これからどうするつもりだろうね』


毎日毎日、泣き続けた。そのうち親戚のうちの一家が私を引き取ってくれたけど、明らかに邪魔者扱いを受けていると幼いながらにも感じ取っていた。


それがまた悲しかった。


─母が死んだことを受け止められるようになるくらい月日が流れた。時間が余ってどうしようもなかった昼下がり、遺品整理をしていると私に宛てた手紙が出てきた。


封筒は少し黄ばんでよれている。

恐る恐る開いてみると、そこに書かれた一言はまったく母らしいものだった。




『茶屋なんて儲からない仕事はするな。それ以外の仕事に就け。幸せに生きてください』



─確かに、お世辞にも儲かる職ではなかった。それでもあんたは毎日笑ってたろうに。


母の“暮らした証”が残るあの茶屋を、私はどうしても残したかった。


私は母の遺志を裏切り、高校を出ると共に茶屋をまた開いた。もう二度と開かないと思っていたし、私も開けるつもりもなかったけれど─あの手紙はどうも、私には「継いでくれ」と言っているようにしか聞こえなかった。