得意げな顔の茜に、全てがどうでもいいと吹き飛んだ。この名に返事をしたら最後。私は彼女の従者となる。
「気に入っていただけました?」
「あぁ。なかなか良いな」
「それは何よりです」
彼女は私を見つめて微笑んだ。
「今日は、星がたくさん出てますね。アカバさん」
「─あぁ」
見えない楔が自分と茜を繋いだ。
どうかその名を忘れないでほしい、と心が震える。忘れ去られた妖の、呼ばれなくなった名前を呼んでほしいと彷徨う亡霊の末路など、見ていられないほど醜いのだから。
「アカバさん、明日も逢いに来てくれますか?」
私は頷く。いつまでも会いに行こう。私は君に名前を付けられた道具のようなもの。それでもいい。名付けたからにはきっと大切にしてくれと子供じみたことを思う自分に笑いがこぼれた。
