暫く沈黙が続いた後、茜は弾けるように笑った。決して馬鹿にしたような笑い方ではなく、本当に単純に面白いから。そんな笑いだった。
面食らっていると茜は真っ直ぐな目でこっちを見た。
「名前がないと呼びづらいですね。私がつけてもよろしいですか?」
「…お前が?」
「あっ、私じゃ不満ですか?」
「いや、そういう意味では…」
しかし人に名前を付けられると、いくら術式を踏まなくとも契は完成してしまう。その人間が死なない限り一生そいつに付き従わなければならない規則があるんだが…私は属したいわけではないし、友として語らえればそれで十分だったんだが。
「うーん…」
二人して頭を悩ませているのは、傍から見ればかなり阿呆な光景だったことだろう。
「あっ」
ひらめいた!と茜が顔を上げた。
「アカバさん、なんてどうですか?」
「…アカバ?」
いまいち由来が分からない。
「紅葉の紅を“アカ”と読ませて、葉っぱを“バ”と読ます当て字です。ハイカラでしょう?」
