それでも誰かいないだろうか。妖である自分を見て、あわよくば恐れず目を合わせて話をできないか。
誰か、私を見つけてくれ─…。
『おい姉ちゃん!こっちこっち!』
『もう一杯!』
なんだ?妙に騒がしい。これは妖じゃない、人の声だ。妙に気になり、私は騒ぎの正体を突き止めるべく足を進めた。
「はい、ただ今」
誰だ?ちらりと木陰から覗き見る。
淡い橙色の着物に真白い前掛けをしたうら若い女がせかせかと動き回っている。満開の紅葉のような明るい笑顔だ。
どうやら、ここは茶屋のようだ。しかも、まだ新しい。なるほどこの女はこの店の女将か。…それにしても、すごい人だ。
紅葉狩りに訪れた人間たちがそのままここへ流れて来たのだろうか。
