「どうかした?」
「いや、なんでもない」
アカバは、おばあさんが進んでいった道の方をずっと見つめていた。見ていたんだろうか。
「あのおばあさんと知り合い?」
ざあ、と風が紅葉を洗う。ばらばらと葉がかけらのように散った。アカバは力なく笑った。
「─昔のな」
寂しそうな声に思わず、分かれ道を振り返る。当たり前だけどもう女性の姿はそこになかった。
「あれの名は、茜といった」
「あかねさん…」
「どうして─どうしてなんだ」
「あ、アカバ…?」
アカバは蹲り、その肩は小刻みに震えだしてしまう。一体どうしたというのだろうか。
