何度も重ねて礼を言う天音の眼は少し潤んでいた。
「じゃあ邪鬼の注意をひきつけて、ここへ誘導するか。…お前たちは何回か見たことあると思うけど、絶対邪鬼には触られるなよ」
先生は苦々しげな顔だ。
「はい」
「俺は西側をあたってみる」
「うん。お願い」
きっと、上手くいく。確かな予感があった。
─それがどんなに悲しい結末だとしても。
静かな時間が流れ、静寂を破ったのはつんざく悲鳴。覚えがあった。
「杏子、来るぞ!」
触れた草木を枯らすほどの瘴気を纏う、天音が手を伸ばし続けた友人の成れの果て。
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