「先生、今日は戦うわけじゃないんです。あの邪鬼は、この妖…天音の友人なんです」
先生は ふうんと頷いた。
「だから、お願いです。もし邪鬼を見つけても」
言いづらく、言葉に詰まると、先生の大きい手が私の頭を撫でた。見上げれば、先生の苦笑い。
「言いたいことは分かった。けど、お前は怪我とかすんなよ」
「はい」
「手出しは無用だ。だがもし、万が一私すらあてられ邪鬼になったその時は、杏子。迷わず私を祓ってくれ」
「……わかった」
全てを受け止めた、迷いのない涼やかな天音の声だった。
「私が、あいつを責任持って終わらせてやりたい。勝手な我が儘につき合わせてしまって、本当にすまない。感謝する」
