助かった…。安堵感から腰を抜かす。
「“あやかし”って、何・・・?」
不思議な甘い風が、私の髪を
揺らす。
彼の長い美しい毛もなびく。
「妖・・・私たちのことだ」
「妖怪じゃ・・・ないの?」
「同じだ。ただ、私たちは自分や
仲間のことをそう呼ぶだけだ。
“妖怪”というのは、
人間たちが勝手に後からつけたのだ」
しばらくの間、私たちは無言で
見詰め合っていた。
「妖は、敬意をはらった言い方とも聞くな」
「妖怪なんかに敬意をはらいたく
ないよ」
そっぽを向いてもごもごと
言ってやった。
「お前はそんなに、私らのことが
嫌いなのか」
