「いいなあ。見てみたい」
「行けばいいだろう」
それもそうだ。昔から、決めたら早いのが私。
「じゃあ、明日行ってみよう」
中三の春に引っ越してきたとはいえ、そんな丘があるなんて一度も聞いたことがなかった。知る人ぞ知る名所なんだろうか。
「噂では町を一望できる丘だ。妖の飲み場スポットとしても有名だな。ただ少し高い。だから人間は恐れをなして近づかんのだ」
「ああ。それに自殺の名所でもある」
うわ、そういう不穏な情報は知りたくなかった。一気に不安になったんですけど。
「杏子。長雨で地盤が緩くなっているかもしれない。人の身では危険だ。できれば近づかない方がいい」
「そう…」
じゃあ、梅雨が明けたら行ってみよう。いいよね?と笑いかけると師匠は「一人で行って来い」と辛辣な言葉を私に投げたのだった。
