はらり、ひとひら。



鳴った体温計を渡すと看護師は早々に病室から出て行った。



何もかもどうでもよく感じられたが、未だ絵を描くことは好きだった。スケッチブックを開いて、続きを書こうと色鉛筆を手に取った。青紫色の花。


もしかしたら夢だったのかもしれないが、どうにもリアルだった思い出が俺にはあった。何度思い出してみても、甘美なあの日々はおとぎ話よろしく不思議だ。




彼女は、俺のことを覚えていてくれているだろうか?



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「名はたしか"千歳"と」


「ちとせ?女の人?」


「失敬な。男だ」



ごめんと謝る。桔々は軽く私を一瞥し続けた。


「彼とはよく丘で話し込んだものだ」


「丘?」


そんなところあるんだろうか、と思っていると師匠がさらりと続けた。


「町はずれの丘か?あそこはなかなかに絶景だぞ。桔梗の花が咲いている」