しばらく呼吸を忘れてしまった。 白くて長い美しい毛。 額に描かれた三日月のような模様。 九本の尾。 「い、犬…?」 「馬鹿を言え、見てわからんかちんちくりん。私は狐だ」 お、怒られた。それにしても桜の木から狐が現れるなんて、どんなマジックだ。 「あなたも妖怪?」 「そうだ」 ざっと桜色の風が舞う。息を呑むほど美しい妖怪だった。