「行って来ます」 履きなれたローファーで通学路を駆け抜ける。 暖かなひだまり。新しい命が芽吹く季節。 ─春。 今日から、高校2年生だ。 「椎名さん。おはよう」 「あ、おはよう神崎君」 もともと彼は背は高いが、まだ伸び続けてるらしい。身長差は開くばかりだ。くっ羨ましい。彼自身が纏う、落ち着いた雰囲気が更に濃くなったと思う。 同年代の男の子の中で誰より落ち着いた、大人びた横顔に見とれる。 「おはよ」 「おーっす!」 声がした方を振り向くと、 「飛鳥!朝比奈君!」