「師匠、起きて、師匠」 ゆさゆさと肩を揺らすとじきにうっすら目が開いた。 「…杏子か」 師匠は立ち上がった。 月明かりに浮かび上がる師匠は、物凄く絵になる。毛色と同じ、透き通る髪色が眩しい。 「師匠、どこか行ってたの?ひとの姿に化けて」 「………野暮用だ」 「…」 「何故黙る」 いやいや別に?でもなんだ、さっきの間。まぁ…師匠にも色々あるか。失礼だと思い、詮索するのをやめた。 「私は疲れた。寝るぞ、杏子」 ふわりと、いつもの小さな狐の姿へと師匠は戻った。