目も鼻も、口も区別がつかない黒の顔を見つめる。
『ぐっ、あぁ放、セ』
札がないから、清めてあげることはできない。祓うことも。
「杏子、やめろ!何をしている!!」
師匠の叱咤する声が遠かった。ゴンも目を大きく見張って何かを言っている。
私は、邪鬼の体を抱きしめた。
びりびりと、痺れるような感覚が体中を這う。ひどく熱をもっているようだった。肌に電流を直接流されている気がする。
「ううあっ」
苦痛に顔を歪めるけど、構わず抱きしめた。
必死だった。一縷の望み、ほんの少しの可能性の問題。もしも─私の霊力で、少しでも邪鬼が浄化されるなら。
「馬鹿、杏子!放せ!!やめろ、死ぬぞ!!」
師匠の口ががばっと開いて私を捕らえようとした正にその瞬間。
邪鬼の真っ黒な顔に、一筋光が流れた。
