師匠の呟いた声はみっちゃんに届いたかわからない。 遠のいていく背中は一度振り返って笑顔で手を振った。ああ、みっちゃんの髪、日にあたるとあんなに綺麗な色をするんだ。 「さようなら。またいつか、どこかで」 縁を結んだなら再び会えるわ、みっちゃんは声を張った。でもその声は、私以外誰にも聞こえない。 あぁおかしいな、妖を見る前はこんな思いしていなかったのに。得るものも大きい、けれど失うものも─ 夏の匂いを巻き込んで上がる土埃に紛れるようにして、彼女は姿を消してしまった。