「雑魚だけど動きだけは早いし、私の心を荒らして不愉快だったのよ」
「心を荒らす?」
聞いてから触れてはいけなかったかな、と思うが、少し間をおいてからみっちゃんは口を開いた。
「私はもともと絵だった。ここが閉館と同時に絵は売られて引き取られたはずなんだけど…ここでの思い出が忘れられなくて、気づいたら物の怪になって、この場所にいた」
「おかしな話よね。未練ある場所に飛ばされて誰ももういないここでじっとしてたの。たまに冷やかしに忍び込んだ人間を脅かしたり、外にいる野うさぎと戯れたり…まあ悪くなかったわ」
懐かしむような目。それは遠い故郷を想うような色をしていた。
「私がこの国へ来る前は、西も東もあちこち転々としていたわ。……私を描いた男は、絵を描き終えると同時に死んじゃった。不審死だって」
