小さな規模だった懐中電灯は一気に輝きを増し、私自身目を開けていられないほどだった。
悲鳴をあげた川津さんの体から抜け出る黒いもやのような妖を、彼は逃がさなかった。
「無駄だよ」
「ぎゃあ─」
あっという間だった。軽い身のこなしと正確な一振り。それは正確に妖の急所を斬った。呆気なくばらけて消える妖をしり目に、彼を蝶みたいだ、と静かに思った。
「終わった、の?」
刀を納めた神崎くんが頷く。
「助かっちゃった。ようやく鼠とおさらばってわけね。ありがとう人間」
気を失っている川津さんを抱えて安堵していると、みっちゃんが笑った。絵に書いたような優しい笑顔だった。
