何が起きたのかわからなかった。気づいたときには強い力で腕を引かれて、地面に伏していた。
顔の横すれすれを何かが通り過ぎて大理石の床が弾ける。
一瞬妖かと思ったが、よく見れば二組目の宮野さんだ。私の背後からどうやらこっちへ近づいて来ていたらしい。
意識が朦朧とした彼女はゆらゆらと私たちに再び腕を振り下ろそうとする。手に握られているのは錆びついた鎌。─ぞっとした。このままじゃ、命が危ない。
「っ、止まれ!」
一か八かだった。届いた言葉は形を成して彼女の動きを封じる。でも、この言霊がいつまで持つかわからない。驚いた顔をした神崎くんの手を引く。
「今のうちに行こう!」
「ありがとう、助かったよ」
階段を駆け上がる。早く早く、どうにかしないと。
二階は想像していたより広く、空気が下の非でない程淀んでいた。元々霊感は強い方だと思っていたが、妖を見るようになってからは更にそういう類のものに敏感になった。
