はらり、ひとひら。



静かな社。花火が咲く音しかない境内にふたり。


「常盤さん。明日、この町でお祭りがあるんです。花火も打ちあがるんですが一緒に見ませんか?」


屈託のない笑顔に決心して口を開いた。やはり、異形のものと過ごすよりヨウコは人といるべきだ。



「もう、やめないかヨウコ。これではお前の一生を台無しにしてしまう。気づいていたかはわからんが、俺は人じゃ…」


続きを言うのはかなわなかった。飛び込んできた彼女のぬくもりがあまりにあたたかく、恐ろしかった。


「あなたが好きです」


ぼんやりと聞こえた声に絆される。すべてをなげうってでも、全てを奪ってでも彼女を連れ去りたいと、確かに思った。



けれどあぁ─俺はこの小さな命を、抱き返すことはできない。



群れからはぐれ一人で過ごす時間が長すぎたせいか、ひどく臆病になったのかもしれない。



「もしこの気持ちが迷惑じゃなかったら、明日。今日と同じ時間にこのお社で待っています。緑の浴衣を着ていきますから、それが目印です」