「えぇ。とても綺麗なんですよ」
綺麗なものは好きだ。興味もあったので深く考えず了承する。喜ぶヨウコにもう遅いゆえ帰るよう促すと「じゃあまた明日」と笑って踵を返した。
いつまでこんな日々を続けられるだろう。夏になってどれだけ日が流れただろう。
修行の途中、兄弟子らと共に見た宝玉や花々、渓谷…全てが美しく目に焼き付いたまま離れない。群れのことを忘れた日など、一日たりともなかった。けれど、彼女に出会ってしまってからはそれさえ霞んで見えるほど、ヨウコは…
─常盤さん、常盤さん。
あぁ、なんだ。聞こえている。
この想いがただの友愛でないことなど気づいていた。けれどそれを伝える術などどこにあろうか。
「伝えてしまえばもう…」
ヨウコに会うことはできないだろう。面をずらし、水面に映った自身の顔を覗きこめば人と何一つ変わらないつくりをしている。でも共に生きることは不可能だ。夏が過ぎれば会えなくなる。
あぁ─叶うならば人として生まれ、共に時間を見送りたかった。
「なにを馬鹿なことを…」
自嘲気味に笑い、面を被り直した。本当に想うのなら、ヨウコを人として幸せに生きさせてやるべきだ。
