「灯雅、俺の話を聞いて」
「なにさ改まって」
「凄く突飛もないこと言うけど、いい?」
「今更じゃないか」
乾いた声で笑う式神に、ほんの少しだけ冷静さが戻ってきた。
彼女の器の大きさには時々救われる。
息をついて心音を落ち着けてから、俺はことのあらましを全て打ち明けた。
「……なるほど。そんな重大な秘密が身近に潜んでいたとはねえ」
うまく伝えられたか自信はなかったが、灯雅は納得したようだった。
「じゃあ白狐は一体何なんだい。こうなった以上、必然的に神ってことになるが……
あいつからは確かに妖の匂いもしたんだ、それは間違いないよ」
神であり、妖でもある?
「…余計わからないな。どういうことだろう」
「さあ。妖でもあり神でもあるなんて、妙ちきりんな存在いると思えないね」
その通りだ。
神と妖…相反するふたつの世界の敷居を跨いでいるような存在がいるなら見てみたいものだ。
「けど─あの子と白狐の間に、なにか良くないことがあったのは明白さね」
「仲違い…とか」
「本人に聞かなきゃ憶測で終いさ。アタシらが堂々巡りしたってどうしよもないだろ」
気になるんなら聞けばいい、とさも当然のように声をあげた灯雅の無神経さが時々羨ましくなる。
