はらり、ひとひら。



いくらひどいことをされたからって、麻上を殺していい理由にはならない。
これ以上野放しにはしておけないけど。
話したら、わかってくれるんじゃないか。
平和的に解決するのではないか─

未だに生ぬるい気持ちを私は捨てられずにいた。


何より薫は、私や神崎くんに何もしてない。

ただの不器用でやさしい、どこまでも真っ直ぐな子。



やっぱりこんなこと─間違っている。

同じ歴史を繰り返すことが、正しい歴史の歩みとは思わない。


綺麗ごとなんかじゃない。
これは私の戦いだ。

私は私なりに、戦うことが許されたなら。


「みんなも、─薫も麻上も。救いたい」



もう泣くのはこれきりだ。
私はひっそりと声を殺して泣いた。

これが終わったら私は顔を上げて進むから。

きっと。







side-神崎


結局、声をかけるタイミングを失ったまま俺は椎名さんの独白全てを聞いてしまった。
すすり泣く声が零した本音はひどく冷酷なものだった。


『みんなも、薫も麻上も救いたい』


誰よりやさしい君は犠牲を出さずに戦いを収めようという。

それが間違いだとは咎めることはできない。
愚かなことだと笑うことはけしてしない。


ただ……一筋縄ではいかないだろう。