「薫も麻上もそうだけど、桜子さんのことも謎がいっぱいだ……」
知るべきことは多くある。
…ありすぎる。
今の私には圧倒的に情報が不足している。
そしてそれを正しく理解する力も。
でも、嘆いていたって仕方がない。
「明るさ」と「能天気」が取り柄なんだから、理解や思考をする前に私は目の前の事実を素直に受け入れよう。
話はたぶんそこからだ。
敵を知らなければ戦う手立ても何もない。
「戦う、か」
怖くないと言ったらうそになる。
けれどそれが約束された未来が遅かれ早かれ来るらしいのだ。
どんな戦いになるか見当もつかない。
しかし、千年前のような戦いをすればきっと……どちらか一方がまた、沈むことになるのだろう。
そして私の役目が歴史と同じ路を辿るならば、薫を沈めるのは私の役割。
そうしなければ、この町は暗雲に沈み多くの命が犠牲になる。
私が負けていい理由なんてどこにもない。
退路はない。
やるしかない。
薫と平坂の命を─
そこまで考えたところで、ぱたりと瞳から雫が垂れた。
ずっと堪えていた感情は限界に達した様だ。
殺したいわけがない。
