はらり、ひとひら。



リダイヤルを試みようと画面をいじくっていると、不意に電波のアンテナマークが切り替わって無情な「圏外」の表示がなされた。


「えっ」


うそ!?

この町は田舎であるが、うちはギリギリ圏外にはならない。しかしどうやら神崎くんのお家は思ったより電波が悪いようで。

「あああ…!!」


更に追い打ちをかけるように、端末の充電不足の警告マークがでた。
どういうことなのもう……


「うわあ……どっちにしろ携帯からじゃかけられないや。それに充電しないとダメか…」


あとで神崎くんに固定電話を貸してもらって、家にかけ直そう。
今は電源を切って、充電しておこうと私は端末を端に除けた。


はあ、と力の入らない体を起こして布団を押入れに仕舞う。

ほんの少し疲労を感じたからだに応じて、畳に腰を下ろすとなんだか一気に感情が波のように押し寄せてきた。
苦しい。


「薫に……次どんな顔して会えばいいんだろ」


虚しい問いかけをしても返ってくる返事はない。
それに、そんなこと一晩考えただけじゃ答えは生まれない。


だってまさか、ひと月同じ屋根の下暮らした人が宿敵だったなんて。

こんなドラマみたいな話、誰が予知できる?
未来予知なんて芸当を成せるのは神様だけだ。

─あるいは桜子さんか。