side-杏子
目を開けると朝だった。
眩しい光は見えず、鬱々としたくもり空が空一面広がっていた。
雨、か。
重い瞼を開けて辺りを見回すと自分の家ではない、ここはどこだと寝起きの頭で考えるがすぐに記憶を呼び覚ました。
昨日は神崎くんの家に泊まったんだ。
「あれから……寝たんだっけ…」
寝落ちたのかとも思ったが、確か彼が寝るよう促してくれたのだったと思う。
いくらか寝たが、昨日で頭に叩き込まれた情報の多さで普段使わない脳みそはかなり疲弊していた。
「……んん、どうしようかなこれから……」
とりあえず今何時、と携帯の電源を入れ時間を確認すると朝の6時過ぎだった。
あまり寝た気がしないけど、二度寝をしたらそれこそ次に起きるのが何時になるかわからない。
ひとさまのお家で寝こけるのは、流石の私も気が引けるし。
…起きよう。
ふと通知を見ると、不在の着信が入っていたことに気がついた。
ディスプレイの表示には「自宅」の二文字。
昨夜の11時半ごろに一回と、0時過ぎにもう一回。
…病院に行ってから電源を落としたままだから、気が付かなかった。
絶対にお母さんがかけてきたものだと思うが、月子ちゃんの件を加味すれば海斗の可能性もある。
外泊の連絡は確か神崎くんの家の人がしてくれたはずだけど、もしや怒っているのだろうか。
「……どっちにしろかけ直さなきゃ」
