梅雨さんの事件があった日の夜、兄貴は俺に言った。
「契約の話は黙っててくれ。」
だから俺は誰にもこのことを話したりはしなかった。
「どうして…どうしてなの?」
ギンは泣きじゃくりながら何度も何度も繰り返す。
「どうして……」
俺はギンの頭を撫でた。
「う…どうして梅雨ねぇが…」
ギンは火がついたように泣き出した。
雨の降る中、多くのバケバケのすすり泣く声が静寂に響く。
どうして…
なんて誰もが思っていたはずだ。
俺はこの出来事を一生忘れることはないだろう。
そして、その十年後知ることになるのだ。
事件の全ての真相を……