私はそのままシイに病院に連れていかれた。
幸い傷は浅く、軽く手当してもらい病院をあとにした。
医者には転んで木の枝に引っ掛かったと言ってごまかした。
今、シイに家まで送って貰っている。
シイの隣には敷島くんもついて来てくれている。
「もう歩いても大丈夫なのか?」
「うん、平気。」
「そうか、よかった。」
シイはほっとしたように笑った。
久しぶりにシイの笑顔を見た気がした。
「ところで…」
シイは敷島くんの方に顔を向けた。
「お前、どうするんだ?」
「どうするって、なにがっスか?」
「これからだよ、また俺の家泊まるのか?」
「ん…考えてなかったっス。」
「赤月姫も見つかったんだし自分の家帰ったらどうだ。」
「うーん、家っスか。」
「家、どの辺なんだ?」
「家は…千葉県ス。」
「は?千葉県??」
「そうっス。」
「新幹線コースじゃねーか。どうすんだよ。」
敷島くんは頭を抱えた。
「敷島、お金持ってないっス。ここに来るまでで使い果たしちゃったっス。」
「…俺もお前の新幹線代出せるほど金持ちじゃないぞ。」
「困ったっスねー。」
「灰音…そうだ!灰音に金貸してもらえ。あいつ、金持ちだしお前の先輩なんだろ?」
「灰音先輩にっスか?」
敷島くんは少し考えたあと、大きく頷いた。
「そうするっス!!」
「よし、そうと決まればすぐ行け。今すぐ。」
「わかったっス!!」
敷島くんは灰音の店の方向に走り出した。



