シイの手に握られた短剣はエレジーの身体を貫いていた。









シイが短剣を引き抜くと、赤い液体が吹き出してシイの服や顔にかかる。






「…シイ……?」







シイは私たちに気がつきこちらを見たが何も言わなかった。


そして目を伏せ、私たちの横を通り過ぎ倉庫を出て行った。










「昨日さ、シイがここに来たよ。」


灰音は床に目を落としたまま続けた。


「謝りに来たんだ。俺は許さないって言ったよ。」


「……。」


私は何も言えずに黙っていた。


「わかってたんだけどさ、エレジーを失った悲しみとか怒りとかがどうしようもなくて、行き場がなくて、全部シイに押し付けた。」






そして灰音は語った。


灰音は何もシイからは聞いていなかったらしいが、どうしてこんなことになってしまったのかある程度の検討はついているそうだ。


シイは半年前、バケバケの力を全て失い、ただの人間になった。


1度人間になってしまったバケバケが力を取り戻す方法をシイは探していたらしい。


それを灰音とエレジーに相談したが、灰音はシイにそんな方法はないと告げた。






しかし、実際には方法があったのだ。