短剣を握るエレジーの腕は震えていた。


「わかった。」


俺の言葉に、エレジーは頷く。


「実はね…一つだけあるの。シイがバケバケの力を取り戻す方法が。ハイネは隠していたんだけど…」


エレジーは語り出した。


俺がバケバケの力を取り戻す方法…洋子を時雨から守る方法を。


それはあまりに残酷で、俺には到底受け入れられる内容ではなかった。







「シイ…私は今から最後の力を使ってこの短剣をあなたに投げる。」


「……エレジー、やっぱり俺は!」


「そしたら、あなたはその短剣で私を殺して。」


エレジーの目は真剣そのものだった。


「いくわよ…」


エレジーの手から短剣が離れ、俺の手に収まった。


俺が…エレジーを…


「シイ、早く!!」


できない、だって…


「シイ!!!早くしないと私はあなたも、ハイネも殺してしまう…あとから来るであろう洋子も殺してしまうかもしれないのよ?そうなったら誰が洋子を守るの?!」


「……。」


「早く私を殺して…!!私が化物になってしまう前に…」


「…俺は」


「あんた洋子を守りたいんでしょ?!」







短剣を握りしめる。


その瞬間、全ての音が無くなった気がした。


エレジーに向き直る。


覚悟は決まった。






エレジーが笑った気がした。







俺は…洋子を守らなきゃ。