「条野さん?今、お帰りですか?」 と、言う可愛らしい声が正面から聞こえ、和音は俯いていた顔を上げる。 「ゆう……いや、深山咲、さん?」 つい名前で呼びそうになり、慌てて名字で呼び直す。 ……って言うか。 どうして友梨が、外にいるんだ? しかも、昨夜から今朝にかけて、また記憶の混濁があったというのに……ひとりきりで? 病院の中ならともかく、外出させるなんて、空也さんも芳情院さんも、少しオカシイんじゃないだろうか。 「……」 和音は何も言えないまま、友梨の瞳を覗き込む。