闇夜に煌めく月と星に照らされ、ただ一人縁側に座り空を眺める。
薄い生地のパジャマを着た彼はふと呟く。

「美月…」

愛しの君の名を呼び、立ち上がり向かう先は美月の部屋。
だが、その途中。
ある部屋から聞こえた愛しい声。
涙混じりだったのだ。

「あたし…、好きなっ…人っ、が…います…っ…」

「…そうか。頑張ったね、ありがとう言ってくれて。…だけど翔太には普段通り接してくれないか?」

「…っ」

その会話に彼は言葉を失うのだ。
そして改めて気付かされる。

愛しの君――成瀬美月には自分ではない想い人がいることを。

ただ彼は垂らした手に拳を作り、障子の向こうの声を聞いていた。

泣き喘ぐ美月の声。
それを抱き留める我が父。


熱帯びた自分の事などお構い無しに彼は冷たい夜の風に身を当てた。


ポタリ。


板敷きに一粒雫が落ちる。


今宵は熱く、けれどもどこか冷たく。
そして儚く、切なかった。