「ん…」

冷たい早朝の空気。
珍しく早く起きた朝。
白く光る障子の和紙が目を眩ます。
障子越しでもなんとなくわかった。
あたしは寒さなど忘れて温かい布団の中から冷たい空気の中に身を乗り出す。

スコン。

障子を勢いよく開けた。


「わあ…!」

目に映るのは白銀の世界。
地面、植物、建物に被さる雪。
これは雪かと目を疑うがその寒さにあたしは現実だと知る。

手を伸ばし雪に触れようとしたとき――

「ばふっ!!」

何者かにあたしは押され、積もった雪にダイブした。
だんだんと冷えていく身体。
あたしは誰だと顔を上げて縁側を見た。

「ざまーみろ」

「しょ、翔太くん…!!」

あたしは思いっきり翔太くんを睨み立ち上がろうとした。
そしたら翔太くんもゆっくりゆっくり雪の中に入っていき、あたしの顔の前でしゃがんだ。

「俺にキスしろ」

「は?」

意味がわからなかった。
いきなりキスしろと命令された。

「ど、どうして?」

「俺がしたいからだ」

「…」

事故中心的な発言をする翔太くん。
あたしの気持ちもしらないでよくそんな事が言えたもんだと、頭の中でイライラする。

すると翔太くんは立ち上がり、あたしを見下した。

「あ、やっぱいいや」

「?」


翔太くんはそのまま手をポケットに突っ込み行ってしまった。

「へっくしゅん!」

翔太くん側から聞こえたくしゃみ。

「…ざまーみろ」

あたしは翔太くんに言われたことを言い返してやった。





―――…



「ごちそうさま」

朝食を終えたあたしは食器を台所に持っていった。
そして静かに部屋を出て自室に行く。

バッグの横にある赤い袋とシルバーの袋に目を向ける。
赤は翔太くん。
シルバーは遥。


「大丈夫かな…」


今日は12月24日。
クリスマスイヴ。
ホワイトクリスマスだ。

うまく脱け出して水城神社に行けるだろうか。
ううん。
絶対に脱け出してみせる。


踊り場で並ぶんだ。

イヴの日に夜、二人で。