「な‥んで?押入れの奥に仕舞っておいたはずなのに…」


「空君が出したんだ‥。俺が空君にトランペットを教えた」


「柏木先輩が…?」



何が何だかわからない。


どうして空がトランペットを?


柏木先輩が空にトランペットを教えた?




「一ヶ月くらい前に、空君がトランペットを持ってうちに来たんだ。
トランペットを教えてほしいって…」


「空が‥?」


「空君、理由は言わなかったけど、たぶん葵ちゃんを元気にしたかったんだと思う。

前に、『お母さんの笑った顔が時々暗くなる』って言ってたから…」




空が私をそんなふうに見ていたなんて…。


元気なつもりでいた私を、いつも空は真っ直ぐに見ていたんだ。




「嶌田にそのことを言ったら、この演奏会で葵ちゃんに聴かせてあげようって言ってくれて、葵ちゃんに内緒でみんなですすめてたんだ」


「そう‥だったんですか…」





驚いてる私に、空が無邪気に笑いかけてる。


その頬には、遼ちゃんと同じ笑窪がヒョコっと顔を出していた。




私は空に微笑んだ。