「お姉ちゃんもうちにおいでよ」

悟君が小さな手で私の手を握り言ってくれた。

「そうね、せっかくだもの、うちに寄って行って」


お母さんと悟君に誘われどうしようか迷っていると、遼ちゃんが少し照れた口調で言った。


「葵、寄っていける?渡したいものがあるんだけど…」


「うん。じゃあ、お邪魔しちゃいます」




悟君に案内されて、リビングのソファに座った。



一度だけ小さい頃に来た事のある遼ちゃんの家の中。


なんとなく記憶に残っていたリビングに、あの頃の面影があった。



「あらやだ、買い忘れてるものがある!」


台所からお母さんの声が聞こえてきて、お母さんが着けかけたエプロンを外しながら言った。


「葵ちゃん、ごめんなさいね。色々話したかったのに、今日のお祝いに使うお肉を買い忘れちゃってスーパーに行かないと…」


「気にしないでください。またお邪魔させてもらいますから」


「ゆっくりしていってね。悟、お母さんと買い物行こう?」


「うん!お姉ちゃん、今度一緒に遊んでね。バイバイ」




お母さんと悟君はあっという間に行ってしまった。


「母さん、けっこうおっちょこちょいなんだ。悟も母さんに似て慌てんぼう。
ちなみに母さんが買いに行った肉っていうのは餃子の肉。母さんは誰のお祝いでも父さんが好きな餃子を作るんだ」


遼ちゃんは嬉しそうに笑って教えてくれた。




遼ちゃんの家族、あったかいね…。


なんだかうちの家族にも似ているような気がした。