「また来るね!みんな頑張って!」

夕方、みんなに手を振り柏木先輩は帰って行った。


なんだか風のような人だった。

みんなの根詰めていた空気を、どこかに吹き飛ばしてくれたみたい。

昨日まで疲れきっていたみんなの顔が和らいでいた。



宿舎の夜は、ドキドキして眠れなかった。


夜の学校。

仲間との生活。

好きな人とひとつ屋根の下。


理由は様々だけど、みんな同じ気持ちだったみたい。

知らず知らず宿舎の外に人が集まりはじめた。


昼間はあんなに暑かったのに、夜の風は少し肌寒い。

私はジャージをはおって麻衣子と階段に座った。


「昼間の小川先輩、様子おかしくなかった?」

「麻衣子もそう思う?どうしたんだろう…」

「葵が柏木先輩に惚れちゃうと思ったんじゃない?」

「まさか!!それは無いね」


そんなことありえない。

だって、私ふられたばっかりだもん。

最近ろくに話もしてないし…。

どんどん距離が広がってるのがわかる。


勢いで告白しそうになったこと

今でも後悔してる。


何も知らなかった最低な私。

結局今も遼ちゃんに甘え続けてる最低な私。



どうすれば遼ちゃんと向き合えるんだろう…。


本当の意味で、強くなれるんだろう…。


本当の強さってなんだろう…。




明日は雨かな。

見上げた夜空は、星がひとつも見えない。


雲間から、うっすらと月の光が見えるだけだった。