「矢吹君・・・。

 はーいっ!

 ダメでしょ。

 大人をからかったら・・・。」

「からかう?

 んなわけないじゃん。

 これは本気のキスだって。

 ねぇ、帰りスタバ寄ってく~?」

 廊下を女子の団体が通りすぎてった。

「先生バイバーイっ!

見られた?」

「大丈夫っすよ~。

 んじゃ俺もバイバイ。」

「矢吹君、今のは無かった事にしましょ。

 先生も忘れるから。」

 まっ赤になった先生は、ボサボサの髪の毛を両手で押さえながら声が裏返っちゃってた。(笑)

「ねぇ、先生。

 俺は先生の事が好きだよ。

 先生は俺の事、どー思ってんの?」

「どう思ってるかなんて、矢吹君は私の生徒で私は矢吹君の担任で・・・。」

 俺は先生が超可愛く見えた。

「先生、もしかしてキスとか最近ご無沙汰なんじゃない?

 だって、震えてたからさ。

 唇が震えてたじゃん?」

「矢吹君・・・。」

 えっ?

 先生はボロボロ泣き出した。

「どしたん?

 先生。」

 涙を手の甲で必死にふきながら、先生は泣いてる。

 誰かに見られたら変に思われるし、俺は先生の手を引っ張って、誰もいない音楽室に行った。

「先生、なんで泣くの?

 俺なんかマズかった?」

「ううん、何でもないわ・・・。

 あのね、笑わないでくれる?

 私、男の人とキスとかって経験がなくて 初めてだったの。

 おかしいわよね?

 気持ち悪いよね?

 32にもなって・・・。

 だから、ちょっとびっくりしちゃっただけだから心配しないで・・・。」

 俺は正直、凄く驚いてた。

 でも、それと同じ位になんかうれしかったりしたわけ。

「なら先生のフアーストキスの相手は俺って事になるじゃん?

 なんか凄くない。」

「矢吹君ったら・・・。」

 先生の肩が震えてる。

「先生、俺マジで先生の事が好きみたい。

 悪いけど、先生、俺の彼女になってくんないかなあ~?」

「私が・・・?」

「そう先生が好きになりましたっ!

 だからお願いっ!

 先生はスカートのポケットからティッシュを取り出すと勢いよく鼻をかんだ。

 私なんてつまんないよ。

 ただのおばさんだもん。」