ある日の早暁。
蓮台野の屋敷の一室でまどろんでいた呉羽は、妙に強い念に目を覚ました。
まだ桜も咲かないこの時期は、朝の寒さがことさら染みる。
衾(ふすま)を引っ被ったまま、呉羽はとりあえず、念を探ってみた。
「・・・・・・烏丸?」
念を飛ばすなど、術師でも相当な腕がないとできない。
それ以外となると、物の怪だ。
呉羽は知り合いの物の怪を思い浮かべた。
まだ子供だが、烏丸は烏天狗である。
妖力もそれなりに強い。
その烏丸が、何か切羽詰まった様子で念を送ってきたようだ。
「どうしたというのだ。こんな朝っぱらから・・・・・・」
声に出したところで、烏丸に声が届くわけはない。
一人でぶつぶつ言っていると、衾の横に、いきなり先程まではなかった人影が現れた。
「何一人でぶつぶつ言ってる。寝ぼけてんのか?」
紛れもなく、男の声だ。
先程まで呉羽の横に置かれてあった太刀が消え、そこに一人の男が胡座をかいている。
「なぁんか、妙な気を感じたな。どうしたぃ? 何か、あったのか?」
大きく伸びをしつつ、妻戸を開ける。
途端に冷たい空気が入り込み、呉羽は一瞬出していた顔を、再び衾の中に引っ込めた。
だが、先程の烏丸の念が気になり、とても二度寝などできる気分でもない。
しぶしぶ、呉羽は起き上がった。
わしわしと頭を掻きながら、衾を肩にかける。
蓮台野の屋敷の一室でまどろんでいた呉羽は、妙に強い念に目を覚ました。
まだ桜も咲かないこの時期は、朝の寒さがことさら染みる。
衾(ふすま)を引っ被ったまま、呉羽はとりあえず、念を探ってみた。
「・・・・・・烏丸?」
念を飛ばすなど、術師でも相当な腕がないとできない。
それ以外となると、物の怪だ。
呉羽は知り合いの物の怪を思い浮かべた。
まだ子供だが、烏丸は烏天狗である。
妖力もそれなりに強い。
その烏丸が、何か切羽詰まった様子で念を送ってきたようだ。
「どうしたというのだ。こんな朝っぱらから・・・・・・」
声に出したところで、烏丸に声が届くわけはない。
一人でぶつぶつ言っていると、衾の横に、いきなり先程まではなかった人影が現れた。
「何一人でぶつぶつ言ってる。寝ぼけてんのか?」
紛れもなく、男の声だ。
先程まで呉羽の横に置かれてあった太刀が消え、そこに一人の男が胡座をかいている。
「なぁんか、妙な気を感じたな。どうしたぃ? 何か、あったのか?」
大きく伸びをしつつ、妻戸を開ける。
途端に冷たい空気が入り込み、呉羽は一瞬出していた顔を、再び衾の中に引っ込めた。
だが、先程の烏丸の念が気になり、とても二度寝などできる気分でもない。
しぶしぶ、呉羽は起き上がった。
わしわしと頭を掻きながら、衾を肩にかける。