左大臣家に入ると、女官は真っ直ぐに右丸の元へと向かった。
「右丸、具合はどうです」
粗末な狭い部屋で、藁にまみれて転がっている右丸の横に座り込み、声をかける。
見たところ、顔色も悪いわけではない。
ただ、己を抱くように丸くなって、苦悶の表情を作っている。
「ふぅん? あんまり良くない状態だなぁ」
のんびりとした低い声に、女官は息を呑んで飛び上がった。
勢い良く振り返ると、いつの間にやらそはや丸が女官の後ろに立ち、肩越しに右丸を覗き込んでいる。
「っな、なな・・・・・・そ、そはや丸っ。いつの間に・・・・・・どこにいたのです」
「細かいことは気にすんな。人より容易に屋敷内に入れるって言ったろ」
それより、と、そはや丸は不意にずいっと女官に顔を近づけた。
「気安く呼ぶんじゃねえ。大体お前は何者だ。名も名乗ってないぜ」
不気味に光る漆黒の瞳に見据えられ、女官は顔を隠すことも忘れて固まった。
先程の驚きも手伝って、冷や汗が背中を伝う。
「けっ。態度ばっかでかくて、全く礼儀のなってねぇ女官だな」
冷たい一瞥を残し、そはや丸は右丸の傍に屈み込む。
屈辱で、女官は顔を真っ赤にしながら、渡殿を走り去って行った。
「右丸、具合はどうです」
粗末な狭い部屋で、藁にまみれて転がっている右丸の横に座り込み、声をかける。
見たところ、顔色も悪いわけではない。
ただ、己を抱くように丸くなって、苦悶の表情を作っている。
「ふぅん? あんまり良くない状態だなぁ」
のんびりとした低い声に、女官は息を呑んで飛び上がった。
勢い良く振り返ると、いつの間にやらそはや丸が女官の後ろに立ち、肩越しに右丸を覗き込んでいる。
「っな、なな・・・・・・そ、そはや丸っ。いつの間に・・・・・・どこにいたのです」
「細かいことは気にすんな。人より容易に屋敷内に入れるって言ったろ」
それより、と、そはや丸は不意にずいっと女官に顔を近づけた。
「気安く呼ぶんじゃねえ。大体お前は何者だ。名も名乗ってないぜ」
不気味に光る漆黒の瞳に見据えられ、女官は顔を隠すことも忘れて固まった。
先程の驚きも手伝って、冷や汗が背中を伝う。
「けっ。態度ばっかでかくて、全く礼儀のなってねぇ女官だな」
冷たい一瞥を残し、そはや丸は右丸の傍に屈み込む。
屈辱で、女官は顔を真っ赤にしながら、渡殿を走り去って行った。