~片桐真琴~
今日は泰兄を隣に乗せてのドライブデートだった。
とは言っても、本当はお兄ちゃんと3人で食事をしようって泰兄に誘ってもらってたんだけど、おにいちゃんが千春さんとデートだということで、私たちふたりは豊浜のなつみ園に。
お世話になった天宮先生に急に会いたくなった私。
泰兄に言ったら、初めは渋い顔をして「遠慮する」なんて首を立てに振らなかったけど、私の粘り勝ち。
今、ハンドルを握っててもハイテンションで眠気なんて感じない。
隣には、泰兄…
いろんな話をしながら…なんて思ってたのに徹夜明けだから寝るって…
そう言ってたくせに、私の運転にケチばかりつけて。
確かに車の運転は得意じゃないし、方向音痴だけど…
泰兄って、イジワル。
だけど、道に迷って困っている私を見かねたのか、最後には運転を代わってくれた。
時々運転する彼の横顔を盗み見した私。
左手だけでハンドルを握って、右の肘は窓際について、こめかみをいじってる。
そして眩しい太陽の光に目を細める。
「サングラスがいるな」なんて言いながら。
そんな姿にドキドキした。
こんな気持ち、やっぱりどうしていいのかわからなくて、とまどってしまう。
ねぇ、泰兄。
私、あなたが好きよ…
木造の小さな小さな教会の前で車は止まった。
あの頃から何にも変わっていないたたずまい。
ここまで来ておいて、泰兄は突然天宮先生に会わないと言い出した。
「じゃあ、どうして来たの?」という私の問いかけに微かに笑って「おまえが来たいって言うからだ」なんて。
なに、それ。
私、泰兄のこと実はよくわからない。
謎だらけ…
何を考えてるのかも、いまいちつかめない。
後で連絡するようにとだけ言い残して、彼は私の車を発進させた。


