ふたり。-Triangle Love の果てに



「次は勇作も連れて、3人で来いよ。再会したのも神さまのお導きだろう」


教会の前で天宮が言った。


頷くマコの頭に手をのせると彼は目を閉じた。


「天にまします我らの父よ…」


彼女も静かに目を閉じる。


こうやっていつも天宮は、ここを訪れた者たちの幸せを願って送り出す。


もっとも俺がこういうことを嫌いなのを知っているから、彼は握手だけを求めて「がんばれよ」と言うだけなのだが。


「身体に気をつけろよ、ふたりとも」


「ええ、天宮先生も」


「泰輔、安全運転でな」


帰りは仕方なく俺がピンクのマーチを運転することになっていた。


「こいつに運転させるより、何倍も安全だ」


「言ったわね、泰兄」


「もう行くぞ、こんなとこ1秒でも早くずらかりたい」


相変わらずだな、そう言って神父には見えない神父は、いつまでも手を大きく振っていた。


「変わらないな、あのおっさんも。だからいつまで経っても独身なんだ」


夕陽に染まった海岸沿いの緩やかなカーブに沿って、俺はハンドルを切った。


「泰兄は口が悪すぎるわ」


「今に始まったことじゃない」


「だけど」とマコは缶コーヒーを開けて手渡してくれた。


「先生にも、いろいろとおありなのよ」


わかってる。


あいつの過去を親切という名のもとに、おせっかいなこの町の大人が話してくれたことがある。


全てを信じたわけじゃないが、あいつには俺なんかよりも遥かにに辛い過去があるのは確かだ。


「ねぇ、浜辺で先生と何を話してたの?」


しばらくして投げかけられた彼女の少し低い声。


やっぱり訊いてきたな。


施設を出てから一度も天宮に会っていないという俺の嘘が気になるのか。


「どうってことない話だ」


そう答えると音楽のボリュームをあげた。


それを俺が答える気がないととったのか、マコはそれ以上何も訊いてこなかった。


しばらくすると、小さな寝息が聞こえ始めた。


隣を見る。


首を傾げたように眠るマコ。


キメの細やかな肌が夕陽に照らし出され、綺麗だった。


俺は音楽を切るとオレンジ色の光の中、車を走らせた。