ふたり。-Triangle Love の果てに



豊浜の海はいつだって静かだ。


俺がここにいた時よりも、ますます寂れた感じがするのは否めないのだが。


天宮の教会が運営する施設、「なつみ園」に俺が引き取られたのは5歳の時だった。


理由はよくわからない。


とりあえず親に捨てられた、そう解釈した。


親戚中を巡り巡ってここに来た。


神父で施設長の天宮は、とにかく変なやつだった。


第一、神父らしくない。


飄々としていて、いい加減なところも多い。


祈りの時間や日曜日の礼拝が大嫌いだった俺は、よく抜け出して裏庭の木に登って海を見ていた。


そのことを天宮はとがめなかったが、一度だけ理由を訊かれたことがある。


俺はこう答えた。


「俺は神を信じていない。これからも信じることはない」


当然だよな。


神がいるのなら、俺はこんなとこにはいないはずだ。


捨てられた、そういう思いを背負って生きていかなくていいはずだ。


それは神がおまえに与えた試練なんだ、きっと天宮はこう言う、俺はそう思っていた。


でも、あいつはあっけらかんと笑って言った。


「信じたくなれば信じればいい。祈りたくなったら祈れ。困ったときの神頼みって昔から言うだろ」って。


こんな男だったが、俺はそんな天宮にいつの頃からか絶大な信頼をおくようになっていた。


神なんて目にみえないものよりも、ずっと天宮のほうが頼りになる。


このことはマコには言ってないけどな。


それに天宮は、金に対していい意味で「無頓着」だった。


執着がない、とも言える。


こんな過疎の進んだ町だから、いつもなつみ園と教会の運営は寄付も集まらなくてギリギリなのに、「まあ何とかなるだろう、今日食べられるだけ神さまに感謝しよう」って祈ってた。


そんなんだから40間近でも独身なんだよ、天宮。