その時、タイミング悪く真琴がボトルを抱え笑顔で戻ってきた。
「なあに、何の話で盛り上がってるの?」
「まあな、男同士いろいろ話すことがあるんだ。なつみ園で誰が一番かわいかったとかさ」
平然と泰輔兄さん。
「やだ、もう。そんな話をしてたの?で、ちなみに誰だったの?」
「勇作はもちろん、おまえだとさ」
泰輔兄さんはクックッとそう答えて笑った。
「じゃあ、泰兄…」
そこまで言って、真琴はすぐに言い直す。
「いえ、相原さんは?」
グラスの中の琥珀色の液体を回しながら、意外にも真面目な顔で彼は言った。
「気にするな、昔のように呼べばいい」
真琴の頬が赤く染まったのを、俺は見逃さなかった。
キャンドルのせいでも何でもない。
明らかに、真琴は泰輔兄さんの一言一句に反応していた。
「じゃあ、泰兄…は、誰が一番かわいいと思っていたの?」
ためらい、恥じらう妹。
「俺か?俺はそうだな」
それをからかうかのように、泰輔兄さんは答えた。
「片桐真琴、かな」
その言葉を聞いて、俺は一気にグラスの中の酒を飲み干した。


