でもかわいい妹のそんな顔を見ていると、兄としてはほってはおけない。
俺は次に取材に行こうと思っていた美容室が近くにあることを思い出し、下見だと言って連れて行くことにした。
はじめは乗り気じゃなかった真琴も、みるみるうちにキレイになっていく自分が嬉しいようで、笑顔が弾けてた。
偶然にも、その美容室のオーナーというのが小学生の時に同じ児童会に入っていた千春ちゃんだった。
再会に盛り上がったのも束の間、真琴が妹だと知った彼女の口から「ああ、あの妹さんね」という言葉が飛び出してきて、内心焦った。
彼女も俺の「秘密」を知っているひとりだ。
同じ日に俺の過去を知っている人物、ふたりに会うなんて…
話をそらせるために取材依頼を持ち出したが、千春ちゃんの言葉がひっかかるのか、真琴は俺の横顔を痛いほど見つめていた。
参ったな。
とにかく、今は泰輔兄さんのことだ。
彼と真琴が会っていることを確かめた上で、何とか手をうたなければ。
俺はYesterdayに行く決心をした。
店の前で泰輔兄さんが現れるのを待つ。
彼がYesterdayに入ってしばらくして偶然を装って俺も入ろう。
どこに住んでいて、何の仕事をしていて、いつやってくるのかも真琴が話さないから仕方ない。
こうするしか、彼に会う方法がないのだから。
寒空の下、仕事帰りに何日も彼が現れるのを待った。
そしてとうとう来たんだ。
颯爽と肩で夜の街の風を切りながら、まるで「帝王」の風格さえ漂わせながら。
道行く女たちが彼の放つオーラに釘付けだ。
こんな人だったかな…
昔はもっと近寄りがたい雰囲気だったのに、今は妖しい魅力をたたえている。
一体彼は何者なんだろう。
まぁいい、すぐにわかることだ。
彼がYesterdayに入店して30分ほどしてから、俺は店の扉に手をかけた。
身体の芯まで冷え切っていて、手が震えていた。
いや、それよりも緊張していたのかもしれない。
深呼吸をしてドアを開けた。


