~片桐勇作~
最近、真琴の様子がおかしい。
おかしい、といえば語弊があるが、何だか以前と違う。
歌を口ずさみながら朝食の準備をしていたり、急に甘い香りのハンドクリームを使ってみたり。
それがどうした普通じゃないか、そう思われるかもしれないけど、俺にはわかる。
あいつが生まれた時からずっとそばで見てきたんだから。
何かあったことくらいすぐわかる。
それも、恋をしてる。
誰かに…
いやだいたいの見当はついている。
泰兄こと、相原泰輔。
真琴は店によく似た客が来ると言っていたけれど、それは間違いなく彼自身だ。
なつみ園で、幼い真琴を助けるためにケガをした…そんな泰輔兄さんのことを、あいつが気にならないわけがない。
当時もよく彼を目で追っていた。
俺、気付いてたよ、真琴。
『おまえは泰輔兄さんが好きなのか?』
口には出さないまでも、何度も心の中で問いかけたのを覚えている。
きっと今再会を果たして、真琴の心は揺れに揺れてる。
本人でも気付いていないあいつの癖。
照れくさいことがあると、あえて核心部分を曖昧にする。
「泰兄に『似た』人がね…」
まさしくこれだ。
間違いない、真琴は恋をしている。
あの人に…
それを決定付ける出来事。
それがあの日曜日に真琴と出かけた時だった。


